研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的は、直接的な見返りの期待できない他人に対する、ヒト特有の利他行動がなぜ進化してきたのか、どのように進化可能だったのかを、間接互恵性と呼ばれる評判を介した互恵性のモデルから明らかにすることにあった。当年度の一番大きな研究実績は、2016年3月にイギリスの王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)に投稿した研究論文が、審査と改稿を経て受理されたことである。この論文はこれまで行ってきた実験研究や理論研究の成果を統合したもので、それが生物学を代表するインパクトファクターの高い雑誌に掲載されたことは、本研究の意義を訴える上で大きな証左となる。また、この論文をもとに自身の博士論文を作成し、神戸大学の審査を経て受理された。これらの研究内容は、第31回国際心理学会議(ICP2016)や、高知工科大学から招待されたセミナーにおいて発表した。さらに、論文に記載した成果を発展させるために、シミュレーション研究を行った。これまでの研究で作成したモデルは、非協力時にコストを伴ってシグナルを発する行動が評判維持へとつながり、結果として評判ベースの協力行動が進化可能になるというものだった。しかし、シグナルのためにコストを払い続ける行動はむしろ利得の面で損にもなり得る。この可能性を検証するため実施したシミュレーション研究で明らかになったのは、コストを払うことによって良い評判を得るメリットが十分大きい場合には、コストを払う機会が多くとも、まったくシグナルを使わない場合に比べればむしろ損にならないということだった。この研究結果は2016年12月に日本人間行動進化学会第9回大会にて発表し、若手奨励賞を受賞した。総合して本年度は、これまでの研究の集大成とそのさらなる進展を、同時に得ることができた。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件)
Proceedings of the Royal Society B
巻: 283(1835) 号: 1835 ページ: 20160694-20160694
10.1098/rspb.2016.0694
120005842582