研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、土壌伝染性の植物病原菌である青枯病菌の植物感染に重要な走化性物質および走化性センサータンパク質(MCP)の特定を目的として解析を行ってきた。本年度は、感染に関与する可能性が高いと予想された「ホウ酸」と「クエン酸」に焦点をあて解析を行った。これまでに青枯病菌がホウ酸に対して走化性を示すことを発見したが、ホウ酸走化性の生態学的意義は不明であった。そこでまずは、青枯病菌が真にホウ酸を標的としているのか、ホウ酸の構造類似体に対する走化性を解析した。ボロン酸、ジホウ酸、リン酸、ヒ酸などに対する走化性を測定したところ、いずれにも有意な応答は見られなかった。このことから、青枯病菌は確かにホウ酸を標的化合物としていると考えられた。また特定したホウ酸センサーMcpBのアミノ酸配列から、ホウ酸センサータンパク質は植物病原菌にのみ限定的に分布することが示唆され、植物感染に重要である可能性が高いことが示された。クエン酸走化性についてはまずMCPの特定を試みた。MCP多重破壊株ライブラリを用いた解析の結果、2つのMCP(McpP,McpC)がクエン酸走化性に関与することが明らかとなった。このうちMcpPは既にリン酸走化性およびマレイン酸忌避走化性に関与することが明らかとなっているMCPであった。また、青枯病菌はクエン酸単体だけでなく、MgやCaとの錯体に対しても走化性を示すが、これらクエン酸錯体に対する走化性にはMcpCが関与しており、McpPは関与しないことが明らかとなった。以上のようなリガンド特性を有する2つのクエン酸センサーの破壊株を用いて、青枯病菌の植物感染へのクエン酸走化性の寄与について評価した。その結果、mcpCおよびmcpPの単独破壊株および二重破壊株のいずれも野生株と同等の植物感染能を示し、クエン酸走化性は青枯病菌の植物感染に寄与しないことが示唆された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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