研究課題
特別研究員奨励費
本研究は,ドーパントとなる異種原子や分子を添加した有機半導体分子膜における分子レベルの自己組織化構造が,有機分子薄膜の巨視的な物性に及ぼす影響を解明することを目的とした.これを明らかにすることで,新規機能性薄膜材料の創成に貢献することを目指す.有機半導体分子膜は軽薄化や大面積化が可能であり,既存の無機半導体薄膜では実現し難い機能を得られる.ドーピングをはじめとする有機半導体分子膜の巨視的な物性の制御には,分子レベルで分子配列構造を制御することが重要となるが,ドーパントの添加された有機複合薄膜の構造は非常に複雑であり,分子配列構造と巨視的物性との相関はまだ十分に理解されていない.そこで本研究では,構造の均一な有機半導体分子膜を作製し,そこへドーパントを添加することで構造のよく定義された有機複合薄膜を作製することを試みた.前年度までに,有機FET分子(PiceneやDNTT)および有機EL分子(熱活性型遅延蛍光(TADF)分子)の高配向分子膜を実現し,その電子状態を,光電子分光法を用いて調べた.最終年度となる本年度においては,前年度までに得られた2種類の高配向有機分子薄膜をベースとし研究を進めた.1.高配向有機Picene分子膜においては,角度分解光電子分光スペクトルの詳細な解析により,piceneの単結晶と同程度のバンド分散が形成されていることを示した.2.高配向TADF分子膜においては,単結晶金属表面に加え,ガラス基板上でも,低速蒸着することで非常に均一な結晶性の単分子膜が得られることを見出した.さらに,作製した薄膜の光取り出し効率が高いことを示した.以上のように分子配列と巨視的な物性との相関を示した.一方,作製した分子膜へドーパントの添加した際,構造の均一な薄膜を得るには至らず,これは今後の課題として残された.
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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