研究実績の概要 |
組織を構成する複数の細胞種・タンパク質分子種の分布に対して,近赤外光励起・発光による生体組織深部と,カソードルミネッセンス (CL)によるタンパク質分子の多色ナノイメージングによる新規相関観察法の確立を目指した.具体的な内容を以下三点にまとめる. 1) 新規イメージングプローブの開拓.希土類酸化物をベースとした近赤外光・CLプローブを開発した.Y2O3を蛍光母材とし,希土類元素を添加した三種のプローブは,980 nm近赤外光及び電子線励起においてそれぞれ異なる近赤外・可視域で発光を示す.近赤外励起・発光とCL,両発光特性を有するプローブとして,上記蛍光体を世界に先がけて見出した. 2) ナノプローブの合成.沈殿法をベースに,ナノプローブの合成法を発明した.従来法に比べ沈殿材を100倍以上と過剰添加し,粒子核形成の促進と原料枯渇化を引き起こし,粒子径50 nm以下のナノプローブを得た.また,添加元素のプローブ内濃度を0.1 mol%オーダーの精度で制御し,発光増強を実現した.上記成果を論文として発表した (S. Fukushima et al., Optical Materials Express, 6, 831 (2016)). 3) 近赤外光・CL生体観察.開発したナノプローブを用い生体観察を検証した.同一領域のプローブ分布の近赤外・CL両顕微鏡による相関観察を達成した.プローブを導入した細胞シートのラット体内位置を近赤外発光により体外から可視化した.細胞内プローブの局在をCL発光色で識別した.以上より,開発した蛍光体ナノプローブを用いて,本研究で提唱する,ホールボディ観察,細胞の深部観察,そしてCLによる多色ナノイメージングまでを達成した.上記成果を学術雑誌に投稿した(S. Fukushima et al., Scientific Reports, in review).
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