本年度は,ストリゴラクトン(SL)受容体アンタゴニストをSL構造活性相関と受容体D14の活性化機構の知見に基づいて設計・合成し,それら化合物の活性をin vitroおよびin vivoで評価した。また,その成果を植物化学調節学会および日本農薬学会で発表した。 α/β-加水分解酵素ファミリーに属するD14は受容体でありながら酵素活性を有し,SLのD環5′炭素への求核攻撃によるフラノン環の開環を介して,ABC環とD環を繋ぐエノールエーテル部分を加水分解によって切断する。加水分解産物であるABC環およびD環(D-OH)はSL自体と比較して著しく活性が低下することから,加水分解によってD環を切断する際のD14の配座変化がSLシグナル伝達には重要であると考えられる。従って,D14には結合するものの,加水分解されない化合物はD14アンタゴニストとして機能する可能性がある。本研究ではこの戦略に基づいて,合成SLであるGR24およびSLミミックとして知られる4BDの2(5H)-フラノン環を2-シクロペンテノン環に置換した1′-carba-GR24および1′-carba-4BDを加水分解耐性型のSL受容体アンタゴニスト候補化合物として設計・合成した。 イネのOsD14に対する活性を評価した結果,両化合物は予想通り加水分解耐性を示し,またGR24との共処理においてはOsD14によるGR24の加水分解を濃度依存的に阻害した。また,イネのSL生合成酵素欠損株d10を用いた第二げつ伸長試験に供したところ,両化合物共にGR24による第二分げつの伸長抑制を阻害してSL拮抗活性を示した。以上,SL活性にはエーテルを介して結合したフラノン環がD14によって加水分解されることが重要であり,これらの化学修飾によってD14アンタゴニスの創出が可能であることを示した。
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