研究実績の概要 |
外界の有害な刺激を感覚器・感覚神経により受容し、それらに適切に対応することは生存上必須である。この生体における“警報装置”とも呼べる機能について、私はショウジョウバエ幼虫の一次感覚神経であるClass IV neuronをモデルとして解析をおこなった。Class IV neuronが42℃以上の高温刺激にさらされて活性化すると、個体は“回転忌避行動”をおこなうことで刺激から逃れていく。これまで、私たちは赤外線レーザーを熱源とした高時間解像度の刺激系を用いてClass IV neuronの熱応答性を調べてきた。そして、高頻度の発火列とそれに続く発火停止期で構成されるBurst-and-pause型の発火パターンが回転行動の促進シグナルであるという仮説を検証してきた。昨年度は、Burst-and-pause型の発火パターンが「下流の神経回路でどのように情報処理されているか」という読み出し機構の解明に着手した。私たちは、Class IV neuronの活性化を光遺伝学に操作した際に、下流の中枢神経系でのカルシウム動態を観察した。その結果、回転行動を調節する一対の介在神経細胞において、シンプルな連続型とBurst-and-pause型の発火パターンの間でカルシウム応答の強さが劇的に異なることを発見した。これは、この介在神経がBurst-and-pause型という特徴的な発火パターンを機能的な信号として識別していることを示していた。つまり、私たちが提唱してきたBurst-and-pause型の発火パターンが回転行動の促進シグナルであるという仮説が強く支持されたことになる。以上の研究成果を取りまとめ、筆頭著者の論文として発表した(Onodera et al., eLife, 2017)。
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