研究課題/領域番号 |
15J06435
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
動物生理・行動
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中城 光琴 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2017年度)
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配分額 *注記 |
2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
2017年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2016年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2015年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | キスペプチン / メダカ / 生殖制御 / 脳下垂体ホルモン / パッチクランプ法 / インサイチュハイブリダイゼーション法 / 免疫組織化学 / キスペプチン神経系 / Gpr54-1/2 / ニューロペプチドB (NPB) / Gpr8 / インサイチュハイブリダイゼーション / 遺伝子組換えメダカ / 定量的PCR |
研究実績の概要 |
本研究では、真骨魚類に属するメダカを用いて、生殖状態に応じてキスペプチン神経系が司る脊椎動物に保存された未知の機能の解明を目的としている。近年、哺乳類を用いた知見から定説となりつつある、神経ペプチド、キスペプチンが担うキスペプチン神経系の生殖腺機能調節因子としての役割は、真骨魚類をはじめとする非哺乳類には当てはまらないことが示唆されてきている。 我々はこれまでの研究において、キスペプチン受容体、Gpr54-1を発現する細胞特異的にEGFPで蛍光標識した遺伝子組換えメダカを用い、パッチクランプ法によるGpr54-1発現細胞の神経活動の解析を行うとともに、各群の投射部位をインサイチュハイブリダイゼーション法、免疫組織化学等の手法により組織学的に解析した。また、同細胞が発現する神経伝達物質として、近年報告されてきた新規ニューロペプチド等を同定した。そして、キスペプチン神経系の有力な出力経路の一つとして、脳内に局在するこのGpr54-1ニューロン群が脳下垂体に顕著に投射し、キスペプチンシグナルを介した脳下垂体ホルモン等の内分泌制御を司るという仮説を立てるに至った。 この仮説の検証のため、まずは上記の共発現が示唆されたニューロペプチドの受容体の脳及び脳下垂体での発現をダブルインサイチュハイブリダイゼーション (double ISH)等の組織学的手法により検証してきた。 以上の解析より、キスペプチン神経系の機能として、脳下垂体における何らかの内分泌制御が示唆されてきている。キスペプチンの生殖腺機能調節以外の機能についての詳細な報告は未だないため、本研究から重要な神経内分泌学的知見が得られることが期待される。さらに、最近の哺乳類におけるキスペプチン神経系の報告も加味すると、本研究で示唆された機能が脊椎動物共通のキスペプチン機能である可能性もあり、解明時のインパクトは大きいと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の解析対象であった複数の脳下垂体ホルモンとキスペプチンシグナルの下流にあるニューロペプチドの受容体の共局在を検証するための組織学的手法(ダブルインサイチュハイブリダイゼーション法)において、最適なプロトコルを検討し、試行を繰り返した結果、予備的な実験結果からの予測に反して、解析対象であったホルモン分泌細胞において当該受容体mRNAの共発現はないことが示唆された。また、各種脳下垂体ホルモンの発現変動を解析するための定量的PCR (qPCR)では、データのばらつき等から最適条件を精査する必要性が生じた。また、樹立予定であった各種遺伝子組換えメダカに関してもEGFP標識の特異性の低さ等から確立が遅れている。一方、電気生理学的手法による神経活動の解析については徐々に進んでおり、複数の脳下垂体ホルモンがキスペプチン神経系の制御を受けていることが示唆できたが、記録条件の検討に当初の予想よりも時間がかかった。これらの解析の遅れから、現在執筆中、投稿予定ではあるものの、現時点で学術論文での成果発表には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、共同研究者より供与された各種KOメダカの系統を用い、現在、表現型を解析中である。今後、qPCR法による野生型との比較から、キスペプチンが脳下垂体ホルモン発現に及ぼす影響を詰めていく。 また、上記の各KO系統を用いた次世代シーケンス(RNA-seq.)の結果から、キスペプチンの標的遺伝子についても解析する。野生型との比較により、各系統で発現変動している遺伝子群を網羅的に検出するRNA-seq.の結果を受け、ダブルインサイチュハイブリダイゼーション法、qPCR法等で検証する予定である。 さらに、キスペプチン神経系が脳下垂体ホルモンの発現ではなく放出を制御している可能性を探るため、標的細胞特異的にカルシウムインジケーター、GCaMPを発現する遺伝子組換えメダカの系の樹立、利用を急ぐ。これによりキスペプチン等の神経ペプチド投与時の脳下垂体の軸索終末でのカルシウム応答をイメージングすることが可能となる。Gpr54-1発現細胞が脳下垂体への特徴的な投射を示すことも考慮すると、生理学的にキスペプチンが脳下垂体ホルモン分泌に寄与することが十分に推測される。以上の解析により、これまで解析を進めてきたGpr54-1ニューロンの脳下垂体での作用機序の解明に加え、KO系統の表現型解析から、キスペプチン神経系の司る他の神経経路についても解析を行う予定である。
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