これまでの研究のなかで明らかになった問題点を深める作業をおこなった。 国内アルミニウム産業に関しては、富山県を中心とした企業の実態調査を実施した。富山県では、江戸時代からの伝統産業として銅器製造が発達しており、第2次大戦期の金属素材不足を機にアルミニウム器具の製造が開始された。戦後、YKKがファスナーと建材としてのアルミサッシ製造を展開し、その部品加工業としてのアルミニウム製造中小企業が集積立地することになった。YKK APの工場調査、下請け金属加工業数社の経営調査を実施して、国内のアルミニウム加工業の特異集積地の現状を分析した。 2013年時点で338を数えるアルミニウム加工業の海外進出分析に関しては、中国天津市で現地調査を実施した。天津市開発特区には、日本の自動車企業が進出し、アルミニウム部品加工業も現地生産を展開している。2016年2月に、アイシン精機、サンデン、ダイハツメタル、豊田通商、UACJなどの現地法人を調査し、中国における事業展開の問題点を聴取し、今後の展望を聞いた。中国経済の減速は、各現地法人の経営にマイナスの影響を与えているが、技術水準の高さが競争力を維持する有力な要因として、今後の事業展開を支えるという展望を持つ企業が多かった。世界でダントツの消費量・生産量1位を占めるアルミニウム大国中国では、アルミニウム製錬業の過剰投資が目立ち、アルミニウム地金価格は低迷している。アルミニウム加工業にとっては安価な原料を入手できる面では好状況であるが、製品市場の縮小で製品価格も低下するので、経営環境は悪化しているのが現状である。
|