研究課題
特別研究員奨励費
当該研究年度はロドプシンを複数持つ細菌において、ロドプシンが光条件、塩分、増殖期ごとにどの程度発現するのか比較トランスクリプトーム解析により明らかにし、作業仮説の証明を試みた。作業仮説では、ロドプシンが働く条件下では呼吸活性が低下し、プロトン勾配の形成を一部肩代わりできるとしているため、トランスクリプトーム解析では、ロドプシンと呼吸鎖関連遺伝子、各種トランスポーター遺伝子の相関解析を行った。その結果、ロドプシンを細胞内に3つ保有する細菌においては、H+を排出するPRとNa+を排出するNaRの発現パターンが似通っており、Cl-を取り込むClRの発現パターンはPRやNaRとは異なっていることが明らかとなった。発現に影響する要素としては、塩分が最も大きく、次いで光条件、培養日数ということも示唆され、これまで全くわかっていなかった、NaRやClRの発現条件を明らかにする上で重要な知見が得られた。3つのロドプシンとその他の遺伝子間における相関解析の結果、PRやNaRはリボソームタンパク質やTCA回路関連遺伝子、脂肪酸合成系の遺伝子などと高い相関を示した。一方、ClRはストレス応答遺伝子や、活性酸素除去タンパクなどと相関が高く、低発現であることも踏まえると、PRやNaRの発現のみでは膜電位形成が不十分な(ストレス)条件下において補助的な役割を担うのではないかと考えられる。作業仮説は「ロドプシンが働く際は呼吸によるプロトン勾配形成の負担を一部肩代わりする」というものであるが、発現の相関からは、PRやNaRと呼吸鎖関連の遺伝子は正の相関を示しており、貧栄養条件では、呼吸鎖もロドプシンも両方とも発現させる必要がある可能性が示唆された。今後、富栄養培地の結果も踏まえて考察する必要がある。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Genome announcements
巻: 5 号: 13
10.1128/genomea.00079-17
Journal of Biological Chemistry
巻: 291 号: 34 ページ: 17488-17495
10.1074/jbc.m116.728220