研究課題
特別研究員奨励費
心拍は最も頑強な生体リズム現象の一つである。この心拍は、心筋細胞のカルシウム濃度の変動に伴った収縮振動によって生み出されている。近年、代表者は、新生児ラットの生きた心筋細胞を38~42℃に温めると、温めている間だけ可逆的に、カルシウム濃度変動と独立した振動数の収縮振動、HSOs (Hyperthermal Sarcomeric Oscillations)が発生することを発見した。この現象の発見は、深部体温が従来考えられていた以上に心拍にとって重要であることを示唆すると共に、心拍にとって、カルシウム濃度非依存な収縮特性が重要である可能性を強く示唆するものであった。そこで、上記の温めた心筋細胞に生じる収縮振動、HSOsの特性に関して、高時間分解能(500frame/sec)のサルコメア長のnm精度計測を行なった。結果、HSOsが発生している状態のサルコメアの振動は、カルシウム濃度変動と同じ振動数の成分と、その数倍高い振動数のHSOs成分の2成分を持っていること、このHSOs成分の振動は、振動の振幅や収縮・伸展の時間が、カルシウム濃度変動の影響を受けて変化する一方で振動周期(収縮時間と伸展時間の和)は一定の値を保つ、収縮リズム恒常性と呼べるような性質を備えていることが明らかとなった。ミオシン等の分子の状態遷移から心臓の拍動までを繋げたマルチスケールモデルから、心筋細胞モデルを取り出し、上記の実験事実の再現を試みたところ、ミオシンの挙動が、ミオシンのおかれた化学力学状態(状況)によって変わる、多機能性を意味するような仮定を置かないと現象を再現できないこと、そのミオシンの仮定を取り入れた心臓拍動のシミュレーションは、従来モデルよりも心拍のエネルギー効率がよくなることが明らかとなった。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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