研究課題
特別研究員奨励費
反応性官能基として生体直交性反応の一つとして広く知られるHuisgen環化反応が可能なアルキニル基を導入したalkyne-PG-surfactantの合成を行った。前年度で問題となっていたゲルの柔らかさを解決するために、1分子内に2つアルキニル基を導入したBis-alkyne-PG-surfactantを合成した。これはシアノバクテリアや高等植物の光合成に中心的な役割を果たしている光化学系I(PSI)に対して変性させることなく可溶化することができた。これは膜蛋白質の変性を抑えながら、膜貫通領域に選択的にアルキニル基を集積させていることを示唆するものであった。そこで続いてPSIを可溶化したサンプルに対してBis-Azide-PEG2000を添加し、さらにCu2+イオンとアスコルビン酸を添加することで、PSIのゲル化の検討を行った。その結果、PG-surfactantに導入したアルキニル基を介したPEG鎖によるクロスリンクにより、同様にPSI溶液のゲル化に成功した。ゲルに固定化されたPSIについて、種々の分光学的測定から評価を行ったところ、一連の過程でPSIには全く変性が起きていないことがわかった。最後に上記のHuisgen環化付加反応によりPSIをゲル化させるプロセスと、押出形の3Dプリンターと組み合わせることで、細いゲル繊維を積層することでできる立体格子ゲルの作製を検討した。この格子ゲルの内部に固定化されたPSIに関して、光誘起電子移動活性による機能活性の評価を行ったところ、ゲル内部の試薬の拡散速度に基づく見かけの活性低下は見られたが、85%以上の活性維持が確認された。以上のことから、反応性官能基を保持した膜蛋白質可溶化試薬を用いた、膜蛋白質のゲル内部への固定化手法は、今後様々な膜蛋白質を用いた半人工分子素子の構築に応用できる新手法となることが明らかとなった。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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