研究課題
特別研究員奨励費
ミトコンドリアタンパク質の膜透過の分子機構を明らかにするため、ミトコンドリア外膜トランスロケータTOM複合体の立体構造解析を試みた。幾つかの酵母種について、Tom22サブユニットのC末端にヒスチジンタグを導入した酵母株からTOM複合体をアフィニティ精製する実験系を構築した(12L培養液あたり約0.1mg)。精製TOM複合体は、ネガティブ染色観察では均一な3量体を形成していることが明らかになったが、CryoEM観察においては変性や解離のためにTOM複合体粒子がほとんど観察されず、構造解析を進めることは困難であった。そこで、精製試料に架橋剤を添加し複合体の構成サブユニット間を架橋するGraFix法を適用することでTOM複合体の安定化を試みたところ、CryoEMによって比較的均一で分散性の高いTOM複合体粒子を予備的に観察することに成功した。今後は、高分解能構造決定のために試料調製や測定条件の更なる最適化を進めていく。TOM複合体の精製過程で一部解離してくるTom40サブユニットについては、回収しゲル濾過精製を行うことで単分散性の高い試料を得ることに成功した。現在は、LCP法やバイセルを用いた結晶化スクリーニングを試みている。また、酵母細胞内に終止コドンを欠失したnonstopミトコンドリアタンパク質を発現し、リボソームと新生鎖の解離を阻害することで、TOM複合体と相互作用したリボソーム・新生鎖複合体(TOM-RNC複合体)の大量調製にも成功し、単粒子解析による立体構造解析を試みた。リボソーム部分については約7オングストローム分解能のdensity mapを得たが、TOM複合体部分については局所分解能が低く構造決定には至らなかった。今後は基質ミトコンドリアタンパク質の長さや種類の最適化によって、リボソームに対するTOM複合体の配向を固定する必要がある。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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