研究課題
特別研究員奨励費
テラヘルツ天文学の重要な検出デバイスであるヘテロダイン超伝導検出器(HEBミクサ)に対して超高速分光による評価を導入し,その動作機構を詳細に理解することによって,検出性能を抜本的に向上させることを目指して研究を進めた.まずHEBミクサに用いられているNbTiN薄膜の伝導特性を,テラヘルツ時間領域分光(THz-TDS)で調べた.NbTiN薄膜試料をスパッタリング装置によって作製し,DC伝導度(~7.6×105 S/m)や超伝導転移温度Tc(~11K)の測定を含めた一連の評価手順を確立した.THz-TDS測定の結果,0.2 ~ 3.0 THzの帯域においてMattis-Bardeenモデル(超伝導薄膜の伝導モデル)に従う複素光学伝導度スペクトルが得られ,そこから超伝導ギャップエネルギーや電子-格子結合強度などの超伝導特性に関する情報を導いた.さらにZimmermannモデル(Mattis-Bardeenモデルの拡張モデル)による解析から,励起準粒子がおよそ数10 fsの散乱時間を持つことを見出し,本手法よりNbTiN薄膜の伝導物性に関する知見が得られることを示した.研究期間の後半では,NbTiN薄膜に対して可視光ポンプ-THzプローブ時間分解測定を行い,光励起によるクーパー対の破壊・回復ダイナミクスを観測した.クーパー対の回復時間はヘテロダイン検出の観測帯域の広さに直結するため,このパラメータを実験から評価することは重要である.今回の測定の結果,破壊されたクーパー対は~数100 psの時間スケールで回復することが示唆された.今後はこれらの評価手法に基づいた膜厚やバッファ層に対する物性の系統的調査や,クーパー対緩和ダイナミクスのモデル解析を進めることで,検出器の動作機構についてさらに有用な知見が得られると期待される.
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)
Current Inorganic Chemistry
巻: 6 号: 1 ページ: 10-25
10.2174/1877944105666150910200258
Applied Optics
巻: 54 号: 35 ページ: 10438-10442
10.1364/ao.54.010438
http://www.resceu.s.u-tokyo.ac.jp/~submm/