研究課題
特別研究員奨励費
胎生期の造血細胞は、周囲を取り囲む“ニッチ“により増殖・分化などの調整を受けるが、その制御機構の全容は未解明である。本研究では、マウス胎仔筋組織に存在する造血前駆細胞(HPC)に着目し、そのニッチ制御機構の解明を目的とした。平成28年度には、前年度に選出したHPC制御に関わる候補因子に関して、1.遺伝子・タンパク質発現解析、2.in vitro機能解析、3.候補因子を発現するニッチ細胞の解析を行った。具体的には、1.Flow cytometry法を用いて、筋組織HPCの一部が候補因子CD97・GPR97発現陽性であることを確認した。また、筋組織で高発現するリガンドのmRNA発現を測定し、Cxcl11、Cxcl12、Tnfsf9、Scfに関してマイクロアレイ解析と一致する結果を得た。2.選出した因子のうち、筋組織HPCでの受容体発現を確認したSCF・CXCL12に関して機能解析を行った。リガンド添加が細胞増殖・遺伝子発現に与える効果を評価し、2日間の培養によりSCF添加群で未添加群に比較して5.15倍の有意な生細胞数増加と、細胞増殖の指標c-Myc・Ccnd1の発現上昇を確認した。また造血関連転写因子に関して、SCF添加群におけるGata2の発現減少、及びMecom、Runx1、Foxo3の発現増加を認めた。CXCL12添加条件では細胞数・遺伝子発現の変動がみられなかった。3.筋組織中でリガンドを発現する細胞分画を検索したところ、非造血系細胞(血管内皮細胞、筋細胞、いずれにも分類されない細胞)がScf・Cxcl12を高発現しており、これらの細胞が筋組織HPCの増殖・分化を調整するニッチとして機能する可能性が示唆された。全体として、筋組織HPCの制御因子の候補を同定し、ニッチとして機能しうる細胞集団を明らかにすることで、筋組織HPCのニッチ制御機構解明に寄与する成果を挙げた。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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