研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的は、空海の構想に基づく東寺講堂諸像のうち、これまで密教思想や密教図像との関連が看過されてきた四天王像の密教的意義を明らかにし、四天王と主要十五尊との関係を考察することにより、二十一尊全体の思想的背景に関する綜合的理解を提示することにあった。第一年度目および第二年度目には、空海が『陀羅尼集経』を密教経典として理解していたことを示し、『陀羅尼集経』所説の像容を基本とする東寺講堂四天王像に壇場結界と関わる密教的意義があったことを明らかにした。さらに、多聞天脚下の地天・二鬼の付加や持国天の手勢・持物の改変についても、壇場結界という視点から解釈が可能であることを示した。こうした研究成果を踏まえ、最終年度に当たる本年度は、四天王と主要十五尊との関係について考察し、東寺講堂諸像の全体構想を追究した。具体的には、東寺講堂諸像のうち、四天王のみならず軍荼利明王にも『陀羅尼集経』所説の像容が取り入れられている点に注目し、東寺講堂における『陀羅尼集経』選定の背景に壇場結界という空海の全体構想が関わっていたとみられることを示した。さらに、造像契機である仁明天皇の「御願」との関連についても、辟除結界による病気平癒という視点から解釈を試みた。これら東寺講堂諸像に関する研究の進展に加え、本年度は毘沙門天脚下の地天と女神像の図像的関連についても検討し、科学研究費補助事業「神仏融合から見た日本の宗教・思想とアジアの比較研究―分野横断による人文学の再生―」(研究代表者・吉田一彦)の研究会および京都大学人文科学研究所「北朝石窟寺院の研究」班(班長・岡村秀典)の研究会で口頭発表を行い、本研究の副次的成果を公表した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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『日本宗教文化史研究』
巻: 38
40020695795