研究実績の概要 |
CCTでは8種類のパラログが特定の配置でオリゴマーを形成している。CCT構成サブユニットは、ATP親和性や基質結合性に差異があるが、オリゴマーとしての機能への寄与は不明である。本研究では各サブユニットの構造・機能の違いを考慮したCCTの反応機構モデルを提唱することを目的としている。昨年度までに好熱性真菌Chaetomium thermophilum 由来CCT(CtCCT)の大腸菌組換え体発現系を構築し、本年度は特に構造変化についての機能解析を進めた。 構造変化解析にはX線1分子追跡法を使用した。解析の結果、ATP親和性が高いサブユニットはATP結合後1秒以内に傾斜方向の構造変化を示したが、ATP親和性が低いサブユニットでは1-2秒後に構造変化が確認された。これはATP親和性の高いサブユニットから構造変化が起こり、次にATP親和性の低いサブユニットへと構造変化が進むことを示している。またいずれのサブユニットでもATP加水分解によるねじれ方向の構造変化はATP添加後4秒以降で観察された。 また、ATP加水分解活性欠損変異サブユニットを含むCtCCTの解析の結果、CtCCTサブユニット2, 4, 5への変異導入はオリゴマーの活性を大きく低下させたが、CtCCTサブユニット1. 3. 6, 7への変異導入ではオリゴマーの活性の低下は限定的だった。 一連の結果よりCCTではATPアフィニティーが高いサブユニットから順にATP結合に伴う構造変化が起き、全てのサブユニットにATPが結合した後に、サブユニット協調的なATP加水分解・構造変化により最終的なclosed構造が形成されることや、この協調的なATP加水分解活性においてリング内に非対称性があることが示された。 一連の研究結果は、PLOS ONE誌にて発表した。
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