研究課題
特別研究員奨励費
本研究は,地球に衝突する恐れのある小惑星に対し,宇宙電磁環境に由来する力を利用した効果的な軌道変更手法を検討するものである.特に,太陽風を高電位のテザーで受け止めて推進する帯電セイルを用いて宇宙機を加速し,小惑星に衝突させて軌道変更する帯電セイルKinetic Impactor (KI)と,小惑星と宇宙機を人工的に帯電させ,両者の間に働くクーロン力で小惑星を牽引するクーロン力・アトラクタの2手法に取り組んだ.本年度はまず,KIにおける宇宙機の衝突効果を解析する手法の提案と検証に取り組んだ.本手法は,小惑星と宇宙機の軌道が同一平面上にあるとの仮定の下,衝突の効果が最大となる軌道交点を探索し,衝突による小惑星のエネルギー変化の最大値を可視化するものである.本概念は,設計した宇宙機の衝突軌道を解析する上で非常に効果的であった.次に,帯電セイルKIについての検討を行った.本年度は,実際の地球接近小天体を元にしたより現実的な架空小惑星に対するシミュレーションを実施し,十分な軌道変更距離が達成可能であることを確認した.また,小惑星に衝突させる質量を最大化するため,テザーなどの各構成要素の質量を最適化する手法に関しても併せて提案した.クーロン力・アトラクタについては,昨年度に開発した小惑星の帯電解析モデルの改良に取り組んだ.人工的な小惑星の帯電によって生じる二次電子,太陽光の照射によって生じる光電子の放出モデルを実際の実験データと理論式を用いたものに変更した.また,様々な小惑星に対して達成される軌道変更距離を計算することで,クーロン力・アトラクタを用いることが特に効果的な小惑星の性質を解析した.結果として,低質量かつ低離心率の軌道を持つ小惑星は,クーロン力・アトラクタを用いた軌道変更が特に効果的であることを明らかにした.また,得られた成果を筆頭著者として論文化し,2報が出版された.
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
天文月報
巻: 110 ページ: 124-130
TRANSACTIONS OF THE JAPAN SOCIETY FOR AERONAUTICAL AND SPACE SCIENCES, AEROSPACE TECHNOLOGY JAPAN
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The Journal of the Astronautical Sciences
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