研究課題
特別研究員奨励費
海洋放線菌が生産するヘロナミド類は、特定の生体膜脂質に結合し、分裂酵母に対して細胞壁の異常合成という特徴的な表現型を誘導する。本研究ではヘロナミド類の作用メカニズムの解明を目指しており、本年度は以下の課題に取り組んだ。1.ヘロナミド類が酵母の細胞膜中で実際に相互作用する脂質分子種の同定を目指し、表面プラズモン共鳴(SPR)測定を行った。十数サンプルの測定に一晩以上を要する従来の測定メソッドを見直し、種々検討の結果、脂質膜の固定化・化合物の結合測定・センサーチップ表面の再生を一元化した測定メソッドの構築に成功した。これにより、分裂酵母から抽出・精製した膜脂質とヘロナミド類との親和性をハイスループットで測定することが可能となった。2.ヘロナミドCをDMSO中室温で攪拌すると、類縁体であるヘロナミドAに変換される。本研究ではこれに加えて、ヘロナミドCに紫外線を照射することで、別の類縁体ヘロナミドBが得られることを発見した。続いて、ヘロナミドCとよく似た構造を持ち、立体化学が未決定な天然物・BE-14106について、先の化学変換条件を利用した構造解析を行った。すなわち、BE-14106を解析容易なヘロナミドA型・B型の誘導体へと変換することで、間接的にBE-14106の絶対立体化学を決定した。さらに、先の化学変換体やヘロナミド類の合成誘導体を用いて、生物活性に重要な構造的特徴を検証した。その結果、二十員環構造を持たない誘導体では分裂酵母に対する生育阻害活性が消失し、2つの水酸基の立体化学が反転しているヘロナミドC誘導体では活性が約1/80に低下したことから、二十員環のコンホメーションが活性に重要であることが示された。これらの知見を活用し、現在、ヘロナミド類の細胞内局在を可視化する蛍光誘導体の合成に取り組んでいる。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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