平成27年度に実施予定であった研究の目的は、フランチャイズ・チェーンにおけるロイヤルティの企業間差異を説明する理論モデルの構築および実証であった。この目的を達成するために、以下の3つの作業に取り組んだ。(1)理論モデルの検討: 既存研究では、ロイヤルティを通じて本部と加盟店の努力を引き出すというインセンティブ効果によって、ロイヤルティの企業間差異を説明してきたが、契約を加盟店が自己選択しているという視点が欠けているため、インセンティブ効果を過剰評価している問題を抱えていた。そこで、本研究では、低いロイヤルティによって、能力の高い加盟店を選別するという自己選択効果を考慮に入れて、既存モデルを拡張した。(2)データの収集と分析:本部は、契約相手を制限する条項を記述し、自社に適した加盟店を選別しているということに着目し操作変数を定めた上で、『日本のフランチャイズ・チェーン』(商業界)および「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法の考え方について」に基づいた法定開示資料からデータを収集し、我が国のフランチャイズ・チェーン89社を対象に実証分析を行った。分析の結果、既存モデルがインセンティブ効果を過剰評価していること、およびフランチャイズ契約には自己選択効果が存在していることが明らかとされた。(3)研究報告:第65回日本商業学会全国研究大会・統一論題「小売サービスの革新と戦略」(平成27年5月)で報告し、本研究に対する貴重なコメントを頂戴し、本研究の高質化を図った。 以上、平成27年度の計画は概ね計画通りに進んでいると言い得るであろう。
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