研究課題
特別研究員奨励費
本年度は論文改訂作業の中で、時間コーディングの嗅上皮における起源、僧帽細胞の細胞体における時間コーディングについて検討を行った。まず、嗅上皮の嗅細胞細胞体の2光子イメージングを行い、機械刺激に対する反応の時間パターンについて検討した。気管切開した麻酔下のマウスで2 Hzの吸気を行った。その結果、多くの嗅細胞の細胞体が、吸気の波形(矩形波)に従う矩形波様の時間パターンを示した。矩形波の立ち上がりのタイミングについては、嗅細胞間では違いがほとんどなく、ほぼすべての細胞が吸気の開始時刻と同時に反応の立ち上がりを示した。一方、嗅球カルシウムイメージングでは、糸球体(僧帽細胞の樹状突起)が吸気開始の位相より遅れて反応し、その立ち上がりのタイミングは糸球体間でずれていた。したがって、糸球の反応タイミングは、嗅上皮での反応がそのまま反映されているのではなく、嗅球の神経回路によって調節されていることが示唆された。次に、匂い応答の時間パターンについても嗅上皮で検討を行った。その結果、匂い刺激に対する反応のタイミングは、嗅細胞間で違いがあることが分かった。したがって、嗅球における匂い応答のタイミングについては、嗅球神経回路に加えて、嗅上皮での応答タイミングに起源を有するものと示唆された。最後に、嗅球の僧帽細胞の細胞体について、カルシウムイメージングを行った。これまで糸球体(僧帽細胞の樹状突起)で観測されていたのと同様に、僧帽細胞では呼吸周期に同期した振動が匂い刺激前・刺激中両方で観測され、その位相が匂い刺激によって前後に変化する様子が観察された。以上、本年度の研究活動により、嗅球時間コーディングのタイミング調節機構について、嗅上皮と嗅球神経回路の役割を明らかにした。さらに、僧帽細胞の細胞体についても、時間コーディングの観察を行った。本研究成果を論文として公表することができた
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Neuron
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