研究課題
特別研究員奨励費
異方的な金クラスターの一つである極細金ナノロッド(AuUNRs)をチオラートで修飾することに平成28年度に成功していた。平成29年度はこの手法をさらに洗練させ、チオラート保護AuUNRs(AuUNR:SR)を5-15 nmの範囲で長さ制御し、高効率に合成することに成功した。配位子交換されたAuUNR:SRはオレイルアミン保護AuUNRs(AuUNR:OA)と比べ安定であることを、局在型表面プラズモン共鳴(LSPR)の挙動を追跡することで、明らかにした。これは、合成に使われていたアミンに対して、今回採用したチオラートはより強固に金表面に配位することができ、AuUNRsの表面をより強く安定化できた結果であると考えられる。この成果により、AuUNRsの低い安定性を改善でき、単離精製や応用への展開を可能にした。また、透過型電子顕微鏡観察では、AuUNR:OAと同様AuUNR:SRが多重双晶構造を維持していることが分かった。光学特性としては、AuUNRsでは長さとともに長波長にシフトするLSPRが赤外域に見られ、この共鳴波長が直径が10 nm以上の金ナノロッド(AuNRs)と比べて長波長側に観察された。これは直径が微細化されたAuUNRsで初めて見られた性質であり、異方的な金クラスターの特異な性質を見出した貴重な例である。また、アスペクト比が3程度のAuUNR:SRでのみ、共鳴波長が大きく短波長にシフトする挙動が観察され、AuNRsのLSPR挙動と大きく異なっている。このことから、短いAuUNR:SRではプラズモニックな電子の集団運動ではなく、電子準位間の一電子遷移に由来する吸収が観察されたと推察している。以上の結果は、高評価でJ. Am. Chem. Socに受理され、異方性金クラスターの合成と光物性の観点で大きな関心を集めている。このことは表紙として本論文が採用されたことからも伺える。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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