研究課題
特別研究員奨励費
本年度は、1940年代における民衆宗教の実態を多角的に明らかにするとともに、今日の学問的・社会的状況における民衆宗教研究の理論的・実証的課題を明確化することをめざし、以下の作業を行った。多角的な観点からの史料収集・分析を通じ、民衆宗教研究の新たな視野を開くことができたと考える。①占領期の民衆宗教は、近世以来の流行神的性格をもつと同時に、敗戦直後に固有の歴史的性格を帯びている。この両面をとらえることが重要である。GHQの民間情報教育局によって収集された宗教資料の分析を進め、占領期の民衆宗教の思想・実践と戦後日本社会との緊張関係を考察した。②1940年代における民衆宗教の動向をトランス・コロニアルな視点からとらえるため、韓国(植民地朝鮮)の民族宗教である天道教、普天教、水雲教、金剛大道を訪問し、近代から現代にかけての歴史的展開についての聞き取りや史料の収集を行った。日本(内地)の民衆宗教の思想的・行動的特徴の共通性と差異を確認するとともに、朝鮮戦争以降の冷戦体制が、民族宗教の歴史性を複雑化させていることを理解することができた。③民衆宗教が1940年代前半の総力戦体制において経験した変容を理解するため、20世紀前半の天理教と大本の歴史を事例に、それらのナショナリズム思想がどのように展開していったのかを検討した。④現在にいたる民衆宗教理解にきわめて大きな影響を与えた安丸良夫のテクストを脱構築的に読みなおす作業を通じて、新たな民衆宗教研究の方法的検討を行った。安丸が発見した民衆宗教の「論理」は、エリート主義的な歴史叙述に痛烈な批判を加え、歴史の主体についての観念の再編を要求した。だが、「論理」へのこだわりが民衆宗教の可能性が狭めたことも否定できないのであり、安丸が注意しながらも分節化できなかった「活力」の問題を掘り下げることで、民衆宗教研究を更新することができるのではないだろうか。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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日本思想史学
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