昨年度に引き続き、流体力学的自由度を考慮した数値シミュレーションにより、濃厚非ブラウン粒子懸濁液のマイクロレオロジーについて研究を行った。流体のない場合と比較して、流体がある場合にはプローブ粒子の受ける抵抗が顕著に増大する機構についてさらに詳しく検証した。その結果、流体の非圧縮性によって応力鎖が自己組織化的に発達し、その周りでチャネル状の流体の流れが誘起されることで強い運動量散逸を引き起こすことが抵抗の顕著な増大の起源であることを明らかにした。さらに、非線形レオロジーの観点から、ドラッグ外力を変化させたときの抵抗の変化を調べた。その結果、プローブ粒子をより強い外力でドラッグしたとき、より強い流れに粒子の構造変化が追随できず応力鎖が不安定化することで抵抗が減少する、シニングの挙動が現れることを明らかにした。以上の結果は、濃厚系においても流体力学的効果がレオロジーに顕著な影響を与えることを示しており、近年注目を集めている懸濁液の非線形レオロジーに対して、これまで見落とされていた流体力学的効果の視点から新たな知見を与えるものと期待される。 本研究課題の当初の目標である、せん断流の下でのシアシックニングレオロジーに対する流体力学的効果についての研究は、今後の課題として残っている。しかしながら、上記のレオロジーの性質は、主に流体の非圧縮性に起因することから、単一粒子のドラッグによるマイクロレオロジーのみならず、せん断流などのより一般的な流れの下においても現れうることが示唆される。
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