研究課題
特別研究員奨励費
本研究課題は、緑藻細胞内に共生するリケッチア"Candidatus Megaira polyxenophila"(通称 “MIDORIKO")のゲノム情報を用いて、細胞内共生体遺伝子水平伝播の段階的発展によってバクテリア共生体がホストによる制御を受ける過程を解明することを目的とする。前年度解読したMIDORIKOゲノム配列を用いて、近縁リケッチア目バクテリアには存在しない遺伝子を探索し、系統解析を実施した。結果、スペルミジン/プトレシントランスポータをコードするオペロンのアミノ酸配列が、デルタ・ガンマプロテオバクテリアと近縁な位置関係となり、他綱のバクテリアの水平伝播に由来すると推測された。スペルミジンは細胞内バクテリアにおいて細胞内環境への適応に関与すると考えられており、MIDORIKOはホスト細胞内環境への適応の過程でオペロンを獲得した可能性がある。また、MIDORIKOからホストへの細胞内共生体遺伝子水平伝播の規模を解明するため、東京農業大学と共同で、ホスト緑藻カルテリアNIES-425株(ホスト株)および非ホストカルテリアNIES-424株(対照株)のトランスクリプトーム解析を実施した。結果、ホスト株と対照株双方のトランスクリプトームデータから、MIDORIKO遺伝子配列に類似した配列を断片的に持つ転写産物を発見したが、発現量は低く、真核生物の遺伝子発現構造を持たなかった。対照株から発見されたMIDORIKO類似配列はホスト株とは異なるため、コンタミネーションではなく、過去にMIDORIKOに近縁なリケッチアが一時的に共生し、消失した可能性がある。本研究から、相互依存的な共生関係が成立していない段階でも、既に細胞内共生体遺伝子水平伝播の初期段階である、共生体配列のホストゲノムへの水平伝播が生じうる一方、機能遺伝子として発現するまでには至らないことが推測された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
CYTOLOGIA
巻: 80 号: 4 ページ: 513-524
10.1508/cytologia.80.513
130005118539