研究実績の概要 |
本研究ではX線結晶構造解析のためにヒトETBRの大量発現・精製および結晶化を行った。昆虫細胞発現系を用いたETBRの大量発現には成功したものの、膜タンパク質であるGPCRは構造が柔軟で親水性領域が乏しく野生型ETBRは結晶化が困難であった。構造を安定化し結晶化を促進するために細胞内第3ループに構造が安定なT4L(T4リゾチーム)を融合した結晶化に適する改変体ETBR-T4Lを作製した。20種類以上の異なる融合位置のETBR-T4Lを発現・精製し、膜タンパク質本来の環境である脂質中で結晶化可能なLCP法によって合計70,000条件結晶化を試した。その結果、ヒト由来ETBRのET-1との複合体およびリガンド非結合状態の構造を、それぞれ分解能2.8 および2.5オングストロームで決定することに成功した。結晶構造中でET-1は、ETBRの細胞外領域のbetaシートやN末端領域を含めた、7本の膜貫通領域で構成されている結合ポケット全体と密な相互作用を形成していた。ET-1の活性に重要なC末端は、ETBRの結合ポケットの奥深くに位置しており、ETBRの正電荷を持つ残基と強固に結合していた。リガンド非結合とET-1結合型構造との比較から、TM6-7の結合ポケット内部への大きな構造変化がET-1の結合および受容体活性化に重要であることを明らかにした。
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