研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、未だに薬物治療が発展していない膵臓に対して、一酸化炭素結合型ヘモグロビン小胞体(CO-HbV)の包括的な治療応用の可能性を追求することを目的としている。以下に本年度の研究により得られた知見をまとめる。1. CDE食誘発急性膵炎モデルマウスに対するCO-HbVの膵炎抑制メカニズムの解析本モデルは、炎症が全身へと波及し多臓器不全へと進展する結果、死に至る致死性のモデルである。血中サイトカイン量の測定により、CO-HbVは、膵臓における炎症を抑制するだけでなく、全身炎症に対しても抑制効果を発揮すること、さらには肝臓・腎臓・肺において、各組織への好中球の浸潤および続発する組織の酸化障害の評価により、CO-HbVはそれらを阻害する結果、多臓器不全への進展を抑制することが明らかとなった。2. セルレイン誘発急性膵炎モデルマウスに対するCO-HbVの膵炎抑制メカニズムの解析膵組織障害により放出されるHMGB1、その受容体であるTLR-4、その後誘導されるNF-kB活性化による炎症増悪化カスケードに着目し、TLR-4受容体の上流および下流に位置するHMGB1量およびNF-kB活性化に必須であるIkBαのリン酸化について評価を行った。その結果、いずれもCO-HbVによる抑制が認められたことから、抗炎症機序として、この経路の阻害が一部関与していると考えられる。さらに、膵組織中の炎症性サイトカインの産生抑制と抗炎症性サイトカインの産生増加が認められたことから、次にこのサイトカインバランスの変動とマクロファージ(MΦ)の可塑性制御との関連について検証すべく、マウス由来MΦ様細胞株を用いた実験を実施した。その結果、CO-HbVは、放出したCOによりMΦの表現型をM2様へと変動させる可能性が示され、サイトカインバランスの変動がMΦの可塑性変動を介した抗炎症応答である可能性が示唆された。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
J Control Release.
巻: 234 ページ: 49-58
10.1016/j.jconrel.2016.05.016
Int J Nanomedicine.
巻: 11 ページ: 5611-5620
10.2147/ijn.s118185
http://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/Labs/Yakuzai/