研究実績の概要 |
平成28年度は、緑茶抹を長期に摂取するランダム化、プラセボ対照、並行群間比較試験のデータ固定及び解析を遂行した。併せて、多施設共同試験に向けた課題を明確にした。データ固定及び解析にあたっては、先行研究を参考にすると共に、試験デザインを考慮した。 当該試験に参加した33名のうち27名が12か月間の試験を完遂した。はじめに、背景情報、介入前及び介入後3ヶ月毎のMMSEスコア、NPI-Qスコア、臨床検査の結果を集計し、データを固定した。緑茶群、ブラセボ群間の比較には、共分散分析を用いた。また、MMSEスコアの変化量の比較は、繰り返し測定の共分散分析により行った。群間比較の有意水準は5%とした。 参加した33名のうち4名が男性、29名が女性であった(平均年齢±標準偏差, 84.8±9.3;平均MMSEスコア±標準偏差, 15.8±5.4)。MMSEスコアの変化量について、群間で有意な差はなかった(最小二乗平均の差 [95%信頼区間], -0.61 [-2.97, 1.74]; P=0.59)。一方、酸化ストレス指標の一つであるマロンジアルデヒド修飾LDLの上昇が緑茶群で有意に抑制された(-22.93 [-44.13, -1.73], 最小二乗平均の差[95%信頼区間]; P=0.04)。以上より、12か月間の緑茶抹の摂取がMMSEにより評価される認知機能に有意な影響を及ぼさないことが示唆された。一方、認知機能低下の一因である酸化ストレスの増大が抑制され、認知機能低下が生じる以前から長期に茶を摂取することが予防的な作用を示す可能性を提示した。今後の多施設共同試験に於いては、より長期的に認知機能の変化を評価することが課題である。課題を解決し試験を行うことで、茶の認知機能低下に対する作用やそのメカニズムを明らかにすることに繋がるもの予測され、期待通り研究が進展したと考えられた。
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