研究課題
特別研究員奨励費
本年度は,主に前年度までに構築してきた手法の改良と実際のデータへの適用へ向けた検証を行い,最終的に月表面のデータに対する解析を行って,その結果を考察し論文にまとめている.月面を構成する岩石がどんな鉱物量比と元素組成を持っているか知ることは月の地質進化史を知る上で重要である.月面の岩相と元素組成に関する詳細な情報を得るためには,連続スペクトルデータを用いることが有効である.一般的に,他天体の反射スペクトルの解析には,反射スペクトルから個々の構成鉱物の吸収帯を数学的に分離して,鉱物量比を推定するために開発されたModified Gaussian Model(MGM)が用いられてきた.しかし,この方法では,多数のガウス関数をスペクトルにフィッティングするために,フィッティングパラメータが多くなってしまい,解の決定が不安定であるという問題があった.そこで本研究では,適切な制限をMGMに組み込むことで,フィッティングパラメータを減らしつつ,鉱物の反射スペクトルから鉱物量比と元素組成を算出可能な方法を確立することに成功した.本研究では,任意の岩相の鉱物量比と元素組成を決定するための手法を確立することを目指して,その第一ステップとしてまずは月面のカンラン石の純度の高い岩相に対して,連続スペクトルから構成鉱物と元素組成を同時に決定できるかの解析を行い,月面のカンラン石露頭の鉱物量比とカンラン石のFa#(=Fe/(Fe+Mg))を算出することに成功した.カンラン石は月マントルを構成する主要成分であり,本研究の成果は月の起源や進化を制約する上で重要であると考えられる.
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Meteoritics & Planetary Science
巻: 52 号: 9 ページ: 1899-1915
10.1111/maps.12896