研究実績の概要 |
ナノ秒パルスレーザビームの時間強度分布シェイパの開発とレーザ微細加工への応用を睨んで,2016年度には(1)透明導電薄膜のベッセルビームスクライビングプロセスと(2)4H-SiCのTSVのためのレーザドリリング加工の特性解明に取り組んだ. (1)について:透明導電薄膜のナノ秒パルスレーザスクライビングにベッセルビームを用いることでアブレーション中のプラズマ遮蔽の影響を最小化し,単パルス照射による薄膜の除去が可能であることを実験および数値モデリングにより解明した.レーザビームの伝搬とレーザ加熱による材料の温度上昇をカップリングした数値モデルを開発した.この数値モデルを用いてベッセルビームがプラズマプルーム後方で回折して薄膜厚方向でも顕著な加熱が行われることを明らかにした.数値解析結果は実験結果ともよい一致を示していた.この研究により今まで貫通穴加工に限られていたベッセルビームの応用分野を透明薄膜の除去加工まで拡張できたと考えられる. (2)について:化学・機械的に耐久性の優れた4H-SiCは従来のエッチングが困難であり,エッチングレートも非常に遅いことが現状である.一方,基板の貫通加工は電子デバイスの形状と機能の高度化のために不可欠なプロセスである.ここで,本研究では高速な加工が可能なナノ秒パルスレーザを4H-SiCの穴あけ加工に用いるための基礎的な検討を行った.ビームプロファイル(ガウシアン,ベッセル),波長(1064 nm, 532 nm)および加工環境(空中,水中)を変化させながら穴あけ加工の特性を調べた.穴あけ加工結果についてラマン分光等を用いて検討した結果,表面の炭化とSi再凝固層形成が加工の分解能と穴の深さに大きな影響を及ぼすことが分かった.本研究で得られた知見は高バンドギャップ半導体材料のレーザ穴あけ加工手法の提案に用いられると考えられる.
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