研究実績の概要 |
aza-Morita-Baylis-Hillman反応は、第三級アミンやホスフィンといったルイス塩基存在下、α,β-不飽和カルボニル化合物がカルボニルα位でイミンと炭素炭素結合を形成し、対応するアリルアミンを与える有用な炭素骨格構築反応である。しかしながら、さらにオレフィンが共役したα,β,γ,δ-不飽和カルボニル化合物を出発物として用いたaza-Morita-Baylis-Hillman反応はこれまでに開発されていなかった。本法で得られる生成物は三つの親電子部位に加え、求核部位である保護アミノ基を有する多官能基性化合物であり、天然物や生理活性物質の合成におけるビルディングブロックとしての活用が期待され、その開発の意義は大きい。本反応では、反応部位がα位とγ位の二つがあるため、その反応性制御を分子内に酸性プロトンを有する有機触媒を設計・合成し用いることで達成する計画であった。すなわち、水酸基の位置をスクリーニングすることで、α付加体、γ付加体のつくりわけが可能と考えていた。3-vinylcyclopent-2-en-1-oneと様々な置換基を有する芳香族イミンを用いて検討を行ったところ、触媒としてDABCOを用いた場合にはα付加体が完全な位置選択性で、DMAPを用いた場合には87-96%の位置選択性でγ付加体が得られることが分かった。本知見は、aza-Morita-Baylis-Hillman反応において初めて位置選択性を制御できたことに加え、用いる求核触媒の変更という簡便な手法で位置選択性の発現に成功した点で意義が大きい。
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