研究実績の概要 |
Haspinは、Aurora Bのセントロメア局在を促進し、正確な染色体分配を行うのに必須である。しかし、Haspin自体のセントロメア局在機構は不明な点が多い。分裂酵母に於いてコヒーシンサブユニットPds5とHaspinの相互作用は報告されていたが、その相互作用の重要性は明らかになっていなかった。分裂酵母HaspinホモログHrk1とPds5の相互作用部位を、同定したところ、真核生物内で保存された結合モチーフPIM(Pds5-Interacting-Motif)とHIM(Hrk1-Interacting-Motif)を同定した。それぞれのモチーフの変異体を分裂酵母において作成したところ、Hrk1のセントロメア局在が失われた。また、PIM-HIMの結合モチーフはヒトでも保存されており、ヒトHaspinおよびヒトPds5Bの相互作用およびヒトHaspinのセントロメア局在にも必要であることが分かった。これらの結果から、HaspinキナーゼはコヒーシンサブユニットPds5との直接相互作用によってセントロメアへと局在し、その機構は真核生物で進化的に保存されたものであることが分かった。 さらに、Pds5-HIMがHrk1局在化以外にもコヒーシンの制御に機能を持っていることが明らかになった。Pds5との相互作用が示唆されていた、Eso1およびWpl1にPIMと類似した配列を発見し、Pds5との相互作用がPIM-HIMに依存していることが分かった。また、PIM-HIMの変異体では、Eso1およびWpl1の機能が失われ、コヒーシン制御に異常が出たことからPIM-HIMによるPds5とEso1, Wpl1との相互作用はコヒーシン制御に必要であることが示された。 これらの結果から、コヒーシンPds5は保存されたモチーフを介して複数の因子が染色体上で働くためのゲートを担っていることが示唆された。
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