OPERA実験は、史上最大の原子核乾板検出器ECCを用いることで加速器でのニュートリノ振動(νμ→ντ)の直接検出を目的とした実験であり、これまでに、極めてバックグランドの少ない5例のντ反応を検出し、5.1σの有意性をもってνμ→ντ振動の証拠をつかんだ。また、振動パラメータであるΔm232については直接検出における初めてのデータを示し、これまでの間接観測におけるパラメータと無矛盾であることが分かった。これらの結果は、スーパーカミオカンデの大気ニュートリノ観測から始まったニュートリノ振動の確実的な証拠として貢献した。 また現在、νμ→νe振動の直接検出や、νμ→ντ振動において唯一見つかっていないτ→e崩壊モードの探索のための解析を行っている。これまでに、ECCのビーム下流側に設置されているCSと呼ばれる検出器での電磁シャワー情報をトリガーにしたνe反応解析を行ってきた。OPERA実験はνμ→νe振動解析のために設計されておらず、元々のニュートリノビームに含まれているνeが支配的であるが、低エネルギーの方で振動後のνeや振動後のντ由来のτ→eの信号が増えている。このCS電磁シャワートリガー解析は、ビーム下流側のECCでνe反応が起こればCS上で電磁シャワーが観測される確率が高いが、ビーム上流側で起こればほぼECC内で電磁シャワーが収束するためトリガーにかからないことがあり、重要な低エネルギーのνe反応解析において特に問題となっていた。現在は、2014年から投入された新しい原子核乾板読取装置HTSのパラメータチューニングが確立してきており、ECC内部のフルボリューム解析が行えるようになってきたため、低エネルギー領域のνe反応の統計を倍増させることができると期待される。
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