研究実績の概要 |
申請者は昨年度、所属研究室で開発された光学活性1,2,3-トリアゾリウム塩を触媒とするカルボニル化合物の直接的不斉α-アミノ化反応を開発した。本法の特徴は、トリクロロアセトニトリルによるヒドロキシルアミンの活性化であり、両者を混合することで発生するO-イミノヒドロキシルアミンを求電子的アミノ化剤として利用している。実際に、ヒドロキシルアミンとトリクロロアセトニトリルからO-イミノヒドロキシルアミンを単離することに成功している。また、単離した誘導体を用いて反応を試みたところ、同様にアミノ化生成物が得られたことから、O-イミノヒドロキシルアミンが実際に中間体として働いていることを確認している。その上で、反応条件および触媒構造の最適化を行うことで、N-Bocオキシインドールを求核剤とする不斉α-アミノ化反応を開発することに成功し、アルキル・アリールを問わず様々な置換基を有するN-無保護アミノ基をカルボニルのα-位に直接的かつ立体選択的に導入できることを明示した。 本年度の研究では、開発したアミノ化反応の有用性を向上させるため、求核剤の適用範囲の拡大に取り組んだ。検討の結果、触媒構造を適切に修飾することで、インダノン誘導体や非環状炭素求核剤であるシアノエステルのα-アミノ化反応を高効率・高立体選択的に進行させることに成功した。また、天然物や医薬品の主骨格として存在する重要な化合物の合成にも取り組んだ。まず、本手法を用いてα-フェニルシアノエステルとN-オルトクロロフェニルヒドロキシルアミンから光学活性なα-アミノシアノエステルを合成し、続くニトリル基の還元及び炭素-窒素カップリング反応により、光学純度を損なうことなくテトラヒドロキノキサリン誘導体の合成に成功した。更に、このアミノ化反応を分子内反応へと適用することで、5員環もしくは6員環のスピロオキシンドール誘導体の合成にも成功した。
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