研究課題
特別研究員奨励費
不斉記憶型反応は寿命のある不斉(動的不斉)を持った中間体を経由するため、中間体自身のラセミ化とそれを経由する不斉反応が競合する宿命にある。従って、不斉記憶現象による不斉誘導には、中間体のラセミ化に比して目的の反応が十分に速い場合に限定される。所属研究室では、より短寿命なキラル中間体に焦点を当てて研究を進め、極めて短寿命な中間体を経る場合でも、適切に分子内反応を設計することで、不斉誘導が可能であることを明らかにしてきた。一方、反応に比較的長時間を要する分子間反応は、中間体キラルエノラートのラセミ化が問題となり汎用性が制限されていた。このような背景のもと、不斉記憶型分子間反応のさらなる適用拡大を念頭に置き、高エナンチオ選択性発現に向けた方策として、中間体のラセミ化の抑制、すなわちキラルエノラートの長寿命化法を確立と、その応用を行った。。これまでの研究により、長寿命化キラルエノラートは分子内カチオン-π相互作用に基づいたエノラートの会合体形成に起因していると推定された。28年度は、長寿命キラルエノラートの構造、特にその会合体構造に焦点を当て、核磁気共鳴スペクトル解析と量子化学計算による最安定構造の探索を行った。その結果、キラルエノラートの1H-NMRとNOESY相関および計算化学より、カチオン-π相互作用の存在が示唆された。また、DOSY測定より長寿命化キラルエノラートは反応溶液中では二量体として存在することを明らかとした。さらに、応用研究としてアミノ酸誘導体の不斉αフッ素化を開発した。28年度にはアミノ酸構造を部分骨格に持つ医薬品を反応基質として利用可能であることを示した。また、合成報告例のないαフッ素化ペプチドへの展開として、アミノ酸チオエステル誘導体の不斉フッ素化に続く直接アミド化やジペプチドにも適用可能であることを明らかとした。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Org. Lett.
巻: 19 号: 2 ページ: 352-355
10.1021/acs.orglett.6b03533