研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、ランタノイド(Ln)イオンに有機ラジカル(Rad)を組み込み、多様な構造や物性を示す物質(4f-2pヘテロスピン系錯体)の開発を目的としている。筆者が提案する分子設計より、Ln-Rad間に大きなねじれを導入したGd-ラジカル錯体を合成した。その錯体では、Ln-Rad間にスピンを平行に揃える最も強い相互作用が働くことが示された。GdイオンをTbおよびDyイオンに置き換えたLn-Rad錯体を合成した。それらの単分子磁石性能を調査した。興味深いことに、非クラマースイオンであるTbイオンを使用した錯体はクラマースイオンを使用したDy錯体よりも優れた単分子磁石性能を示した。本研究で取り扱う化合物はこれまで知られる4f-4fや4f-3d系化合物に比べて十分強い磁気的相互作用を示す。強い磁気的相互作用のために、本実験の測定温度においては分子で一つのスピンとして振る舞うように見える。一般に、クラマース性は原子に適用されるが、本研究の結果はクラマース性を分子まで拡張して適用できることを示唆した。すなわち、分子の総スピン数における偶奇(クラマース性)とSMM性能に相関がみられることを明らかにした。この研究成果は、単分子磁石をはじめとする分子性磁性体の新たな設計指針として期待できる。また、本年度では、前年度に報告した強い反強磁性的相互作用を示すGd-Rad化合物の物性をより詳細に調査した。具体的には、東京大学物性研究所および東北大学金属材料研究所と共同研究を行った。国内有数の高磁場施設の利用により、Gdイオンと相互作用する有機ラジカルのスピン状態が変化する挙動を実験的に観測した。さらに、本化合物のスピン状態を高磁場・高周波EPR測定およびその解析より明らかにした。本成果をもとに投稿した学術論文はACS Editors' Choiceに選定され、高い外部評価を得た。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 7件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件)
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