研究実績の概要 |
本年度の研究活動の中では、以下の2点について一定の成果が得られた。 1. 昨年度から積み残しの課題となっていた、プラハにおける共産主義運動とシュルレアリスムの関係。昨年度の調査渡航から持ち帰った資料等の検討を進め、1920年代-30年代の共産主義運動とプラハのシュルレアリスムの相互関係、および理論的な布置を明らかにした。この成果を基に、本年度は『美学』に論文「戦間期チェコスロヴァキアにおけるシュルレアリスムのポリティクス―政治的イデオロギーと真理による自己統治をめぐって―」を投稿、掲載された。 2.チェコスロヴァキアの共産主義政権期におけるシュルレアリスト・グループの活動の状況。本年8月から9月までチェコ共和国に渡航し、国立図書館や古書店などで、共産主義政権下でヴラチスラフ・エフェンベルゲルやヤン・シュヴァンクマイエルらが中心となって少部数が製作されたシュルレアリスト・グループのアンソロジー『開かれた遊戯』(Otevrena hra)や機関紙『アナロゴン』 (ANALOGON)等を閲覧・収集した。この調査の内容を基に、11月、Surrealism Between the Flows - The Politics of Surrealist Collective Creations in Czechoslovakiaというタイトルで英語論文をまとめ、名古屋大学でひらかれたシンポジウムImages of 20th century wars, from Cubism to Surrealismで口頭発表を行った。この論文は、平成29年度中にフランスの出版社Les Editions du Netから論集の形で出版される予定である。
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