本研究の目的は、戦後日本のマスメディアにおいて流通してきた主要な「若者言説」を対象に、①それらはどのような方法で信憑性を獲得してきたのか、②それらはどのような社会的実践(言語による活動)を行ってきたのか、について明らかにすることにある。 既存研究ではマスメディア上に流布する若者言説は科学的手法に基づかないステレオタイプであると批判されてきたが、そのような研究のみでは、人々が個別具体的な若者言説において「何を行ってきたのか」についての歴史が大きく見過ごされてしまうと思われる。科学的な観点からすれば誤謬であっても、若者言説が多くの社会に広く浸透し、人々の文化や政府の政策、企業のマーケティング戦略など様々な社会的実践に影響を与えてきたことは事実である。若者言説を科学的に検証し解体していく作業は重要ではあるが、若者言説がいかにして社会的なリアリティーを獲得してきたのかについての歴史を記述していくことも社会学的に重要な作業と思われる。 以上の問題関心から、平成28年度は前年度に引き続き、新聞報道と雑誌批評を対象に、「若者」及びそれに関連した概念やカテゴリーの用法を分析することで、当該言説がどのような言説実践を行っているのかを明らかにしていく作業を行った。具体的には①「パラサイト・シングル」論から「ニート」論への変遷とそれらのカテゴリーが可能にした活動に関する分析(前年度より継続)、②「若者」と「メディア」を因果的に結びつけた言説実践に関する分析を行い、前者は書籍に向けに論文化し、後者については学会発表を行った。
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