研究課題
特別研究員奨励費
本研究課題では、腫瘍細胞そのものや、腫瘍細胞が放出するエクソソーム表面に露出するホスファチジルセリン(PS)に着目し、露出した PS を介してマクロファージ活性化が調節され、癌悪液質の発症に関わる経路を検討する。本年度は、アポトーシス細胞においてPS の露出を実行するスクランブラーゼのノックアウトマウスを用いて検討を進めた。まず、スクランブラーゼ活性を持つXkr4・Xkr8・Xkr9のうち、免疫細胞(Tリンパ球・Bリンパ球・好中球)ではXkr8の発現が優位であり、Xkr8ノックアウトマウスより調整した免疫細胞にアポトーシスを誘導するとPS露出が遅れることを明らかにした。この結果は、これら免疫細胞ではアポトーシス時にXkr8依存的にPS露出することを示すものである。次に、Xkr8ノックアウトによりPS露出が阻害されたアポトーシス細胞は、マクロファージに速やかに貪食されないことを明らかにした。この所見に一致して、Xkr8ノックアウトマウス生体内では、デキサメタゾン投与後の胸腺中TUNEL陽性細胞の増加や、Zymosan投与後の腹腔内好中球の増加のように、アポトーシス細胞が貪食されずに残留することを示した。そして、MRL系統メスのXkr8ノックアウトマウスでは、自己抗体価上昇、糸球体への免疫複合体沈着といったSLE様の病態が観察され、アポトーシス細胞が適切に除去されないことが原因と考えられた。本研究はアポトーシス細胞のXkr8依存的なPS露出の生理的意義を明らかにした点で大きな進展があった。しかし、現段階では癌悪液質の病態との関連は解明できておらず、今後の検討課題である。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Proc. Natl. Acad. Sci. USA
巻: 115 号: 9 ページ: 2132-2137
10.1073/pnas.1720732115