研究実績の概要 |
植物における新規のオートファジー因子を発見することを期待し、ペルオキシソームの増加を示す変異体(peup変異体:peroxisome unusual positioning)20ラインを解析対象とした。これらのラインにおいて、暗所飢餓における枯死、および液胞内プロテアーゼ阻害剤処理による液胞内小胞蓄積を認めた。よって、これらpeup変異体は、オートファジーが欠損している変異体であると考えられる。 原因遺伝子を明らかにするために、peup10, 13, 15, 17についてマッピングを行い大まかな原因遺伝子の位置を決定した。次世代シークエンサー(NGS)を用いて網羅的に変異箇所を特定し、その中から非同義置換を引き起こす変異を抽出した。これらをマッピングのデータと照らし合わせ、候補となる原因遺伝子の絞り込みを行った。 peup10について、候補遺伝子の欠損株を入手し、peup10変異体と交配を行い、アレリズムテストのためのF1を取得したが、F1ではpeup10の表現型が回復しなかった。すなわちこの候補遺伝子がpeup10変異体の原因遺伝子である可能性が高い。候補遺伝子はprotein kinaseであり、酵母および動物細胞のにおいて液胞輸送およびオートファジーの根冠に関わる重要な因子であることが報告されている。しかしながら、この因子を欠損した植物は致死となるため、植物での機能解析はほとんどなされていない。peup10変異体の研究は、植物におけるオートファジーのメカニズム解明に大きく貢献できると期待できる。 peup13, 15は既知のオートファジー関連因子が原因遺伝子である可能性が高いことが明らかになったが、peup17はマッピングにより決められた領域内に既知のオートファジー関連遺伝子は存在しない。よってpeup17は植物における新規オートファジー関連因子であると期待できる。
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