研究課題
基盤研究(C)
本研究は、イングリッシュネス意識の発生の起源を19世紀英国大衆演劇に求め、当時のメロドラマに見られる愛国心の発露が、大英帝国の隆盛に陰りが見え始めたころから顕著になってくる外国人恐怖や人種差別意識と表裏一体の関係にあることを示そうとした。研究に着手する以前はアングロ・サクソニズムが明確な形をとるようになったのがヴィクトリア朝期であると考えていたが、有史以来英国は常に外部から侵略されており、自らの混血性が意識されていたことが分かった。この結果、外部からの侵略を受けなかったために純血性を維持していると考えられたゲルマン人への親近感がイギリス大衆芸術の中でも描かれていたことが判明した。
この研究の結果、今日の世界で最も影響力が大きいことが当然視されている英米圏の文化が、脆弱な根拠の上に成り立っていることが示唆された。このことにより英語中心主義を相対化する視点が得られるとともに、自国中心主義を掲げる英米両国の国民の中にある混血への不安、あるいは白人文化の衰退への恐怖などが見て取れる。有史以来、外部からの侵略を受けてきた歴史を持つイギリス人の中にある混血性への不安あるいは純潔性への憧れは、これとは正反対に、優れたものを掛け合わせることでさらに優れたものが生まれるはずだという理想化に繋がり、これがアメリカ合衆国のモットーの一つである「多からの統一」に繋がった可能性も考えられる。
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『オスカー・ワイルド研究』
巻: 16 ページ: 77-93
立命館英米文学
巻: 26 ページ: 1-20
40021092903