研究課題
基盤研究(C)
ボルネオ低地熱帯雨林においては降水や気温に明確な季節変化がないため、樹木フェノロジーの季節性も明確ではない。この様な森林で炭素循環がどのように変化するのかは分かっていない。本研究では森林の炭素循環が土壌水分とどのような関係があるのかを明らかにした。その結果、幹呼吸速度、幹や葉の成長のタイミングは土壌水分と関係があることが明らかとなった。その一方で細根の生産量や呼吸速度、土壌呼吸速度も土壌水分とは関係が見られなかった。これらの結果より、樹種の多様性が非常に高い本試験地では、樹種によってフェノロジーが異なるため、炭素循環全体としては季節的にはほとんど変化しないことが明らかとなった。
気候変動の将来予測などを行ううえで、熱帯雨林の炭素循環の理解は必要不可欠であるが、特に気象の季節性が不明瞭というアマゾンなどとは異なる特徴を持つアジア熱帯雨林において、森林の中のどこで、いつ、どのくらいのCO2がで蓄積・放出されるのかといった中身についての理解は進んでいないという問題点があった。本研究はアジア熱帯雨林で初めて、森林の炭素循環の各要素について長期間測定を行い、森林全体の炭素循環としてはあまり時間的な変化はないことを示した。この成果は、炭素循環モデリングでの精度向上など、今後の将来予測を行う際に非常に意義深いデータとなると考えられる。
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