研究課題
基盤研究(C)
BCG接種したマウスでは結核菌に対する強い感染防御が発現すると共に、その防御免疫応答が過剰に働かないようにするための制御機序が誘導されることが示されている。本研究では、この制御機序について解析を行った。マウスにBCGを接種し、8週後の脾T細胞をin vitroでPPD刺激した。その際、様々な抑制性シグナル経路に対する抗体を添加し、どのような制御機序が関与しているのかをIFN-g産生を指標にして調べた。脾T細胞をPPDで2日間刺激してBCG特異的なエフェクターT細胞およびエフェクターメモリーT細胞機能の制御機序について調べたところ、IL-1a、IL-1b、IL-1R1、CTLA-4やTim-3に対する抗体処理ではIFN-g産生量に影響はなかった。一方、抗PD-1抗体を添加した場合には著明なIFN-g産生の増強が認められた。従って、PD-1シグナル経路はエフェクターT細胞の機能を抑制することでBCG感染後期の免疫制御に関与することが示された。さらに、セントラルメモリーからエフェクターT細胞への分化に対する各抑制性シグナル経路の影響を調べるため、BCG感作マウスより得られた脾T細胞を各種抗体存在下にPPDで5日間刺激してT細胞分化を誘導した。このT細胞機能をPPDの再刺激に対するIFN-g産生応答を指標にして解析した結果、抗PD-1抗体処理はT細胞機能に影響を及ぼさなかったが、抗Tim-3抗体によりIFN-g産生量が増強されることが示された。一方、C3およびI型IFNに対する抗体で処理した場合にIFN-g産生が抑制されたことから、これらを介したシグナル経路もBCG感染後期のT細胞分化の制御に関与することが示唆された。これらの結果から、抗結核感染防御に関与するT細胞の機能制御にはエフェクターT細胞の機能発現とその分化誘導の局面でそれぞれ異なる様々な制御機序が関与することが示された。
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