研究課題
基盤研究(C)
エピジェネティクス理論に基づく生活習慣病の疫学的病態解明を目的として、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常のいずれの既往歴も持たない男性421名(平均50.7±6.1歳)を対象に、出生時体重とHDLコレステロールの生成過程で重要なATP-binding cassette protein A1(ABCA1)遺伝子のメチル化との関連を検討した。DNAのメチル化率は、50歳以上では、2500g未満群は2500g以上群に比して有意にDNAのメチル化率が高かった。50歳未満では両群間に有意な差はみられなかった。良好でない胎内環境が成人期後半のABCA1遺伝子のDNAメチル化率を促進する可能性が示唆された。
これまでの生活習慣病予防対策は、出生以後の生活習慣・環境を良くすることであったが、胎内環境に着目した。胎内環境が高血圧などの生活習慣病の発症に関連することが報告されている。この関連を説明する仕組みの一つとして、胎内環境が遺伝子配列の変化を伴わず、遺伝子の発現のみに変化を与えることが分かっており、その本態は遺伝子のメチル化である。本研究ではHDLコレステロールの生成過程で重要な役割を果たすABCA1遺伝子を取り上げ、良好でない胎内環境が成人期後半における同遺伝子のメチル化率を促進する可能性を明らかにした。公衆衛生的な視点で解釈すると、本研究結果は周産期医療、母子保健の重要性を謳うものである。
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