研究課題
基盤研究(C)
和歌山県内で1999年10月から2017年9月に発症した川崎病2106症例の情報を分析した。発症時の患者の年齢と性別に焦点を当て、発症の季節との関連を記述し、冠動脈異常発生リスクを分析した。年齢層が高くなるにつれ男女比は小さくなった。6か月未満児で夏・秋に発症した割合が高かった。発症1か月時で川崎病研究班の基準によって判定された冠動脈異常は2.8%で、夏発症でその割合が低かった。多変量解析の結果、5歳以上の男児と6か月未満の女児で冠動脈異常発生リスクが高かった(基準:12-35か月男児)。悉皆性のある川崎病症例情報を用いた疫学研究によって川崎病発症の季節と冠動脈異常発生との関連を見いだした。
川崎病は日本人で罹患率が高く年間1万5千人を超える新規発症がある。臨床診断される症候群のため臨床像は一定せず、その病態は全身性の血管炎のため冠動脈に炎症を起こして瘤合併例がある。川崎病罹患者数は増加傾向にあるがその要因は未解明で、発症に関連する環境要因も特定されていない。現在は川崎病を疾患登録する事業等がないため罹患者集団の中長期予後の把握も難しい状況にある。本課題では、川崎病の発症状況を特定の地域全域で把握したことで悉皆性のある症例調査情報に基づいた記述疫学研究が可能となった。罹患年齢層によって男女比と発症の季節分布が異なることを報告し、冠動脈病変合併例の分布と発症の季節との関連を示した。
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