研究課題
基盤研究(C)
15の型のヒトパピローマウイルス(HPV)が子宮頸癌の原因となる。現行のHPVワクチンは、型特異的な中和抗体を誘導するL1タンパク質を抗原とし、2つの型に有効である。我々が分離したL2タンパク質に対するモノクローナル抗体(MAb24B)は、少なくとも8つの発癌性HPVを中和できる。本研究では、MAb24Bを使用した受動免疫ワクチンの有効性を調べた。アデノ随伴ウイルスベクターを用いた遺伝子導入によりMAb24Bをマウス体内で発現させた。1年以上に渡って血清中にMAb24Bが検出され、経膣接種した16、18、58型に対する感染防御効果が認められた。
全ての発癌性HPVに有効なワクチンが求められているが、そのためには15種類のL1抗原を混ぜる必要があり、技術的、コスト的な問題が指摘されている。本研究では発想を転換し、広域中和抗体を体内で発現させることで幅広い型の発癌性HPVの感染を防ぐ受動免疫ワクチンの可能性を調べた。AAVベクターを用いた遺伝子導入によりマウス体内で広域中和抗体が持続発現し、ベクター接種から1年以上経過した時点でも、複数の発癌性HPVに対する感染防御効果が認められた。これらの結果は、広域中和抗体を発現するAAVベクターが幅広い型のHPV感染を防ぐ受動免疫ワクチンとなり得ることを示すとともに開発のための基盤となる。
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