本研究では階層をなす補文標識句のフェイズ性について、補文標識句を超えて適用される長距離名詞句移動及び格付与の分析に基づいて検証した。本研究の主要な成果は以下の通りである:(1)フェイズを形成する補文標識句 (CP)からの長距離名詞句移動が可能である新たな経験的証拠が存在する、(2)長距離名詞句移動の局所性は一致 (Agree) の局所性に還元される。(1)は日本語の擬似小節構文において見られる意味役割を付与される主節の位置への長距離名詞句移動の考察により得られた。(2)日本語の目的語位置への繰上げに課せられる制約の考察により明らかになった。
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