研究課題
若手研究(B)
本研究では衛生博覧会という展示イベントを中心に据えて、細菌学理論が社会に向けて発信されていくプロセスを分析した。その成果として、たとえば「衛生のアミューズメントパーク:ドレスデン国際衛生博覧会(1911年)の啓蒙戦略」(『歴史人類』第44号、2016年)では、専門知の啓蒙装置としての衛生博覧会においては、病気の患部を視覚的に再現するにとどまらず、来場者が実際にオブジェを操作して身体臓器等の動きをリアルに再現するという、体験型・遊戯型のオブジェも設置されていたことを指摘した。
本研究成果の学術的意義としては、細菌学的知の普及回路の一端を明らかにできた点が挙げられる。従来の公衆衛生史研究は、科学者共同体内部での細菌学理論の確立か、当該理論に基づく公衆衛生政策の諸相を語るかのいずれかであり、その社会的普及過程は等閑視されてきた。それに対し本研究は、その普及過程を再構成する視座を提示できたと思われる。社会的意義としては、科学的知が社会全体で共有されるメカニズムの一端を提示できた点にある。放射性物質をめぐる言説のように、現代は科学の言語であらゆる現象を語る時代である。専門知の社会的普及を分析する本研究は、そうした時代における科学と社会の関係性を顧みる一助となりうる。
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