研究実績の概要 |
本研究では、処方される医薬品の規格をより安価な組み合わせへ変更することによる経済的メリットを明らかにし、今後の国民医療費の削減につなげることを目的としている。2016年度は、主に健康保険組合から提供を受けたレセプトデータ等を集めたJMDCデータベースを用いて調査を行った。調査期間はデータ提供が可能であった2005年1月1日から2014年8月までの間とし、対象医薬品はアンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)に分類されている全ての品目とした。日本で上市されていたARBはカンデサルタン、バルサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、ロサルタン、イルベサルタン、アジルサルタンの7成分であった。調査期間中、ARBが処方されていたレコードは2,403,022件であり、このうち規格適正化の可否判定の際に必要な情報(医薬品の規格、用法用量、処方日数)が欠損している862,837件を除外した1,539,727件を解析対象とした。規格適正化により、削減が可能であった金額は30,921,510.3円であった。これは、平均すると薬剤費全体の約0.74%に相当した。今回の調査において、規格適正化可能な処方錠数の割合は、すべてのARBで経時的に漸減し、5%付近で一定となっていた。したがって、実臨床では経時的により安価な組み合わせによって処方される割合が高まるが、全体の5%程度は規格が適正化されないまま処方が継続されていると考えられた。この理由として、特に薬剤服用中に問題がなければDo処方が継続されている可能性、あるいはアドヒアランスや服用錠数の自己調節などによる可能性が考えられた。また、新たな規格が上市された際、速やかに適切な規格への切り替えを行うことで効率よく医療費を削減できる可能性が示唆された。今回の結果の解釈には、より高齢者の多い国民保険のデータを含まない点に注意が必要である。
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