研究課題
若手研究(B)
冠動脈ステント再狭窄に対する治療として、薬剤溶出バルーン(Drug eluting balloon:DEB)のような冠動脈内腔への薬剤塗布デバイスが使用されているが、薬剤塗布の安定性等に不明な点が多い。一方、光干渉断層法(Optical Coherence Tomography:OCT)により、血管内に塗布された物質の視覚的評価が可能である。本研究初年度は薬剤塗布のOCT所見と、組織へ実際に移行したパクリタキセル(PTX)との関連性を評価した。遺伝性動脈硬化モデルであるWHHL( Watanabe Hereditary Hyperlipidemia )ウサギの大動脈および総腸骨動脈に対して、DCB使用後にOCTを撮像したのち動脈組織の組織内PTX濃度を測定し、OCT所見との相関を検証した。組織は各々ホモジナイズし、ジメチルスルホキシドに溶解してパクリタキセルを抽出した。遠心および専用フィルターにて挟雑成分を排除したのち、高速液体クロマトグラフィーを用いてPTX量を測定した。デバイスのPTX搭載量を100%とした場合、その組織移行量は5.38±0.94%であった。高輝度粒子影の付着所見とPTX組織移行量は、中等度の有意な正相関(R2=0.3357, p=0.0019)を有していた。PTX組織移行量の最小値は4.6%、最大値が7.0%であること、塗布部位による濃度差は少ないこと等も判明した。これらの結果を平成28年3月開催の日本循環器学会学術集会において発表した。臨床でのOCT所見が治療予測指標として有用か否かをさらに検証していくために重要な基盤を形成した研究成果であった。研究代表者の海外留学に伴い本研究課題は平成27年度のみで終了となるが、この研究成果を基として今後は実臨床における薬剤塗布デバイス使用時のデータ収集を行い、塗布所見と慢性期の再々狭窄予防効果の関連性などを明らかにし、OCT所見が臨床上の治療予測指標として有用か否かをさらに検証していく方針である。
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