研究課題
若手研究(B)
今回の研究の目的は、ヒトにおける小脳の学習機能の評価方法として、プリズムレンズを用いた適応課題を用い、その評価システムを確立するとともに、小脳疾患患者への応用を通じて、病態解明や治療効果判定を行うことである。まず、プリズム順応課題の評価システムを確立する目的で、健常ボランティア9人に対してプリズム順応課題を実施した。全員において問題なくプリズム順応課題を施行することができ、結果についても安定して得られることがわかった。このことから、今回の課題における実験系の確立、正常者における結果の再現性の確認を行い、このシステムがプリズム順応課題の評価システムとして有用であることを示した。評価項目としては、順応中の学習曲線の傾きや順応後の残効果などを評価項目としているが、これらが小脳の学習機能の一部を表していると考えられる。次に、このプリズム順応課題の評価システムを用い、小脳疾患の病態解明を目的として、小脳機能変化について検査を行った。脊髄小脳変性症患者7人の治療前後の結果の比較(うち、ヒルトニン前後の比較5人、ステロイドパルス前後の比較2人)と振戦患者2人の視床凝固術前後の結果の比較を行った。これらのうち、ヒルトニン前後では現時点では有意な変化はみられていないが、今後さらに対象人数を増やしての検討が必要であると考えられる。また、小脳梗塞患者など他疾患との比較検討も今後必要になってくると考えられる。